ぷらすつうしん第145号より


 人が認識できる速度というのは、せいぜい自転車程度ときいたことがある。車や電車、地下鉄などの車窓から
モノゴトをみたとしても、目に映るだけ、通り過ぎるだけらしい。記憶に刻まれたり、脳にインプットされるの
はやはり人間が移動できる速度が最適のようだ。(正否が気になる方はご自身で調べて私にも教えてください!)

 先日、町歩きというものに参加してきた。広瀬川の内側のはしっこの宿場町として大いに栄え、私が子供のこ
ろもにぎわいのある商店街としての記憶がある若林区河原町界隈である。ところが高齢化社会は老舗の商店街を
も飲み込み、気づけばシャッター商店街と化していたという。この2年ほどでやっと新しい店が出来たり、若い
人の参加したくなるような取り組みの輪郭が見えてきたという。

 さて、その町歩きである。「歩く速度」というのが実に良い。町歩きボランティアさんの解説と参加者との会
話に耳を傾けつつ、目は昔を懐かしみ、手ではスマホをパシャリ。時には立ち寄った老舗和菓子屋の差し入れを
貪るという贅沢さもある。

 幾度となくとおった道沿いの蔵やお店に意味を持って知ることができる。なぜ蔵の町になったのか、蔵を保存
するための町での取り組み、正宗公の足跡、その後の発展、町名の由来と現在など。材木屋は一件もなくなって
しまった南材木町。染師町にはまだ数件残っているが、川に染め物を流す風景は見られない。今や高層高級マン
ションになってしまった場所は、かつてレンガ工場が建っていた。耐久性が高いとの評判のそのレンガは当時か
らJRの土手に使われていて、国内ではここでしか見らない貴重な構造体だという。

 今回の町歩き私は2回目の参加である。前回は20数名、今回は約半数。告知の難しさを感じたと担当者が言っ
ておられたが、担当者というのは行政側の人で地元の人ではない。

 こういう時地元の人たちの会話でよく聞こえてくるのが「自分たちは(この地区全体を)珍しくもないし、自
慢とも思わないし、特に何もない」という話。

 そういう人には他の町歩きに参加することを是非とも勧めたい。他者を知ることによって自分を知るいい機会
になるはずだ。我が町には「何もない」のではなく「何も知ろうとしない」自分たちがいるだけである。

 若い世代には良い町だから残したいと言うのであれば、ぜひ行動に起こして「おらほの町に来てけさいん」と
言いたくなるような一歩を踏み出してほしいものだ。(SN)


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