ぷらすつうしん第138号より


 10月はノーベル賞月間です。日本でも医学生理学賞を大隅良典氏が受賞し、3年連続日本人受賞と大きく報じ
られました。報道で見る限り、とても気さくで好感の持てるお人柄です。が「よい家庭人とは言えないが、妻が
ずっと支えてくれたことに感謝したい。ありがとう」と研究に没頭して子育てにかかわれなかったことも明かし
ました。男子が本懐を遂げると常に「内助の功」が美談として報じられることに違和感を覚えるのは私だけでし
ょうか?妻の萬里子さんも研究者(大学の教授)として今回の自食作用の共同研究者であったようです。育児・
家事をこなしながら研究職を続けるのは並大抵のことではなかったと思います。好きなことに没頭する気質は男
女問わず誰にでもあります。没頭できない環境(育児・家事−それを不幸なこととは思いませんし、経済的・物
理的・精神的にゆとりがあれば、創造・芸術に匹敵する醍醐味があります)は常に女の側にあり、それが当然と
いう社会通念です。 

 しかし、なぜ「功成り名を遂げる」と内助の功に光があてられるのか。女(人間)の資質を狭めていないか。
女の労働と賃金は男の補助労働・家計補助という匂いが芬々と漂います。

 その社会通念、女性差別に敢然と立ち向かい、闘い勝利した 屋嘉比ふみ子さん(ペイ・エクイティ・コンサ
ルティングオフィスPECO代表 元京ガス男女賃金差別裁判原告)を講師にお招きし、働く女性のための公開
講座「なめたらアカンで!女の労働」を開催しました。 

 日本で初めて男女賃金差別を是正させるために有効な「職務評価」で「同一価値労働・同一賃金」を要求・提
訴し、「男女賃金格差は女性差別であり、労基法4条違反」という判決で勝利的和解を勝ち取り、その後の「京
ガス倒産争議」では屋嘉比さんを差別しぬいた典型的な企業内組合・男組合と協力し「倒産争議」を闘い抜きま
す。

 屋嘉比さんの著書からいくつかの言葉を紹介します。

 『労働者のエンパワメント(人々に夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っている素晴らしい生きる力を湧
き出させること)とは外から学問的に得るものではなく、運動を実践する中で、人の潜在的な力があふれるよう
に引き出されることなのだ』『日々会社と対峙する中で鍛え上げられ、連帯を尊び高い理念を掲げて闘える』
『私自身は83年から24年間ひとりで職場闘争を闘ってきたが、倒産争議を通じて男女差別の犯罪性を男たちが少
しでも理解し、はじめて連帯しあえたことがこの争議をより美しい形の解決に導く要素となった』 (I)




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